関東大学リーグ戦第21節 悔しいドローも、首の皮一枚つながる



 関東大学サッカーリーグ戦第21節(後期第10節)が11月14、15日と各会場にて行われ、専大は中央大学と江戸川区陸上競技場で対戦した。

展望

 前節、9位の神大に0-3と完敗を喫し、残留へ本当に後がなくなってしまった専大。今節もし勝利を逃せば、最終節を残して降格が決まる可能性が出てきてしまった。

 しかも、その重要な試合の相手は、逆転優勝へ向け8節から実に13試合負けなしと、現在全チーム中もっとも勢いのある中大。加えて、専大は昇格した昨季から3敗1分と中大相手に勝ったことが無い。そんなチームから勝ち点3を奪わなければならない状況は、客観的に見るとどうしてもネガティブになってしまう。しかし、実際に戦う側はそうではないようだ。源平貴久監督は「中大のような向かってくるチーム相手には、いつもそれなりの戦いができる。そういう意味ではやりやすい相手なのかもしれない」と語れば、DF渡部博文主将は「前期の対戦で負けはしたが、中盤を崩して仕事をさせないやり方は効いていたように思える」と打開策が見えているようだ。降格の危機と隣り合わせとなった一戦。“専大サッカー”で勝ち点3を奪いにいく。

※降格の条件
専大が△の場合→法大が○かつ筑波大が○または△
専大が●の場合→法大が○または△


試合内容

・前半

 江戸川区陸上競技場は激しい雨、風にさらされていた。まるでこれから行われる激戦を予想するかのように。そんな中試合は始まり、前半2分早くも動きを見せた。専大の右コーナーフラッグ付近で得たフリーキック。キッカー藤本が左足でクロスを上げると、中で待っていた神村にピタリ。これを押し込んで見事に先制点をあげた。3試合ぶりの得点、しかも早い段階での先取点と、理想的な立ち上がり。選手たちのこの試合にかける意気込みがゴールを生んだように思えた。

 このままの流れで行きたいところだったが、この試合に勝てなければ優勝が厳しくなる中大も、すぐさま盛り返す。5分、中盤高い位置でボールをカットされると、スルーパスからキーパーと1対1に。しかし、これを久々に先発出場の菊島が絶妙な飛び出しでキャッチした。17分にもピンチ。左サイドをスルーパスで破られると、そこから中へとつながれ、最後は右からシュートを打たれる。決定的なシーンだったが、これはサイドネットをかすめていった。雨風の影響からか、両チームあまりパスを細かくつなぐ場面がなく、シンプルな攻撃が見られる。しかし互いに精度を欠き、この後試合は膠着状態が続いた。

 ようやくチャンスが生まれたのは40分。専大は左サイドを崩すと、藤本がファーへクロス。これに走りこんだ関根がダイレクトボレー。枠に向かったボールだったが、これをキーパーがファインセーブ。追加点を奪えない。逆に終了間際の44分、競りあいのこぼれ球をゴール付近からシュートされるも、これはわずかに右上にそれ、九死に一生を得た。結局前半は1-0のまま終了。互いに負けられない試合。雨に濡れながらも懸命にプレーする姿に、必死さがヒシヒシと感じられた。


▲好機を演出する藤本修司

・後半

 ハーフタイム中に雨はあがり、晴れ間が見えた後半。これが試合にどう影響するか。先にチャンスを掴んだのは中大。中央やや右、25m付近からのフリーキック。専大の裏をかいた菊島のいる側へのシュートに反応が遅れたが、ボールはクロスバーに当たり外れていった。ピンチの後のチャンス。55分、左サイドへこぼれたボールを藤本が意表をついてダイレクトでクロス。これがゴール前で相手に当たると、なんと神村の元へ。体勢を崩しながらもシュートを放つと、キーパーの手を弾き飛ばしゴールへ吸い込まれる。勝ち点3へ向け、なんとも大きい追加点をあげた。

 なおも攻撃は続く。60分、右からのコーナーキックに関根に代わって入った町田のヘッドは右にそれた。65分には藤本からのロングボールに抜け出した神村がキーパーと1対1になるも、これを左に外してしまった。それでも前半のスタイルから一転して、いつもの“パスサッカー”に戻した専大が主導権を握る展開に、このままいけば勝利は堅いと思われた。しかし、その矢先だった。67分、中大の左サイドからのコーナーキック。これをファーサイド、頭で合わせられ失点。一気に試合は分からなくなってしまった。


▲スペースに抜け出す神村奨

 これで守りに入るかと予想された専大だったが、攻めの姿勢を一向に崩す気配はない。自分たちのスタイル最後まで貫き、とどめを刺す、確固たる決意が見受けられた。すると専大に次々とチャンスが生まれる。直後の69分、伊藤の頭での落としに小幡がシュートもゴール上へ。70分、小幡の左からのクロスに神村が足で合わせるが、これは惜しくもバーに直撃。続く72分にはアーリークロスに神村が飛び込むも、キーパーが弾く。さらにこぼれ球を拾った町田のクロスに合わせるも、再びキーパーが超人的なセービングでゴールを割らせない。76分には中央に切れ込んだ小幡のミドル、これがまたもクロスバー。再三決定機を作りながら、試合を決める追加点を奪うことができない専大。バーに2度も弾かれるという不運には、何か嫌な予感を感じずにはいられない。そして、それが見事に的中してしまった。

 78分、左サイドを中大に崩されるとミドルシュートを打たれる。枠に飛んでいたが、これを菊島が左手一本横っ跳びでセーブ。なんとかコーナーに逃れた。しかし、そのコーナーキック。ボールがゴール前にこぼれ混戦になると、クリアしきれず押し込まれて同点。残り10分。完全に自分たちの流れだった展開。悪夢としか言いようがなかった。

 それでも、試合はまだ終わらない。両チームとも、欲しいのは勝ち点3。引き分けでは意味がない。この後、一進一退の攻防が最後まで続いた。しかし、互いの懸命な守備にゴールネットが揺れることはなく、試合は終了した。

 両者ともに勝たなければいけなかった試合。ホイッスルと同時にピッチにいる22人ががっくりとうなだれた。ある者は芝をたたき、ある者は叫び声をあげる。その光景には、こみ上げる熱い何かを感じずにはいられなかった。


▲試合終了後

 引き分けた結果、最終節を残して2部降格が決まる恐れがあった専大だが、法大も今節引き分けたため、残留へはかろうじて首の皮一枚つながった。10位法大とは依然として勝ち点差3。得失点差は1のため、最終節もし専大が勝ち、法大が敗れれば逆転で残留が決まる。しかし裏返せば、それ以外は何が欠けても降格。より厳しい状態になったことは否めない。日程の都合上、次節法大の試合は専大の試合の後に行われる。最下位東海大にしっかりと勝ち、後に控える法大に少しでも多くプレッシャーを与えたい。


試合詳細


専修大学 2(前半1-0)2 中央大学
得点者:【専】2分=神村(アシスト:藤本)、55分=神村【中】67分、81分
START
4-4-2
GK:菊島孝樹
DF:小川直純、渡部博文、鈴木雄太、藤本修司
MF:佐伯大成、飯島康允、小幡純平、関根雄太(55分→町田也真人)
FW:伊藤卓也、神村奨
SUB=GK:柿沼雄太 DF:高原伸介、鈴木嵩之 MF:庄司悦大、町田也真人 FW:石井佑季、大西佑亮


コメント


源平貴久監督

―結果について
試合への入り方は良かったが、セットプレーでの失点ですべてが崩れてしまった。良い流れのうちにもう一点取れていればというところ。それでも、今日みたいな試合が常にできればと思う。
―悪天候の影響はあったか
雨でグラウンドの状況が良くなかった。予想はできていたので、選手たちには前半はあまりボールを回さず、シンプルな攻撃を心がけさせた。ハーフタイム中で雨が上がってくれたので、後半はいつもどおりの戦い方に戻した。
―今日は前節とメンバー、フォーメーションを変えて挑んだが
大西、町田のコンディションが落ちていたのと、鈴木がこのところ調子が良かったので入れ替えた。配置としては、飯島をボランチ(守備的ミッドフィルダー)にして、関根を右ハーフに上げたのと、伊藤を今日はフォワードにして神村と2トップを組ませた。結果的に守備陣からボールを前に運ぶことができたと思う。
―次節へ向けて
残留についてはどうなるかわからないが、自分たちのカラーを出して、来年につながるプレーをさせたい。

渡部博文主将

今日は試合前から皆気持ちが入っていたので、中大の勢いにも負けていなかった。最初から前への意識を強く持ち、相手陣内でのプレーを心がけた。良い形が結構できていただけに、決めるべきところ、セットプレーの守備と最後の部分が悔やまれる。
―失点に関して
自分たちが点を取った後は一番集中をしなければいけない。特にセットプレーなんかは、余計に気をつけるべきだったのに失点してしまった。もっとセーフティーに試合を運ぶべきだったと思う。結局のところ、そこで防げるチームが強い。“絶対に守りきる”という気持ちが足らなかった。
―今日は鈴木選手とセンターバックを組み、飯島選手が一列上がった形になったが
守備ができる飯島が中盤に入ったことで、低いところからの組み立てができていた。そこで奪ってからのカウンターも効いていたと思う。鈴木は前へつなげるし、ウチの新しいバリエーションになる。
―前線が神村選手と伊藤選手の2トップだったが、チームとして意識したことは
神村は飛び出しが売りなので、相手ディフェンスの裏を狙うことを心がけた。特に藤本からの裏を狙うボールは相手が嫌がっていたと思う。また伊藤の高さは武器なので、ロングボールを当てて、そこからスペースに神村といった攻撃もできていた。
―縦パスが多い印象を受けたが
意識していた。回すだけでなく前へ追い越す動きがほしかったので。雨が降っていたのも理由の一つ。
―次節に向けて
残留は他力になってしまうが、法大戦のことは考えない。今日みたいな気持ちの入り方が大事だと思う。まだ最後の部分は改善が必要なので、しっかりと作り直して試合に臨みたい。


神村奨選手

―自身のプレーについて
久しぶりのスタメンだったので、全力で勝ちに行こうと気合が入っていた。裏へ抜け出す意識を高くもってプレーしていた。
―得点について
1点目は藤本君が良いボールを蹴ってくれたので、それにちょっと触れただけ。2点目はオフサイドかと思ったが、こぼれ球にうまく合わせられたと思う。
―この2得点は監督への良いアピールになったのでは
このところスタメンを外されていたのは悔しかった。得点できたのは嬉しいが、チームが勝てなかったので…。
―伊藤選手との2トップだったが
伊藤さんは高さがあって器用なので、競ったところのこぼれ球を拾うのを意識していた。
―次節に向けて
気持ちを高めて全力でプレーする。自分が取った点を勝ち点につなげたい。


 次節はついに最終節。11月21日、NACK5スタジアムにて11時30分から東海大学と対戦する。劇的な残留を決め、笑顔で09年度の集大成としたい。



(馬場雄也・ネット情報3)



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